最近は”一生モノ”という響きに弱い。
特にファッションは流行り廃りが毎年のように起こっていて、新しい服を買ってはその次の年にはダサくて着れなくなる、そんな状況が何度も繰り返されている。
最近は地球温暖化とか環境に配慮された活動がなんとなく活発になってきていて、それでこそファッションの使い捨てのような慣習はいかがなものか。
ひとつのものを大切にずっと着続ける、そして決してダサくならないクラシカルなものこそ本当の環境に配慮した個人でできるサステイナブルなんじゃないかと思う。
そんなことを考えているとふとあのブランドが目についた。そう「Barbour(バブアー)」だ。
イギリス生まれの由緒正しいクラシカルなその服づくりは、毎年のトレンドに左右されない確固たる伝統を守り続ける。
ファッションを楽しみたい、それでいて環境も大切にしたい、長く付き合っていく地球なのだから普段の装いにも敬意を払って今回はBarbour(バブアー)の紹介をしていこうと思う。
Barbour(バブアー)とは?
Barbour(バブアー)は約125年も続く超老舗英国ブランド。
元は1894年にイギリスのサウス・シールズという漁業が盛んな街で生まれたBarbour。産業革命真っ只中のイギリスでは労働者は多く、ここサウス・シールズでは海や雨にさらされる人が多かった。そんな彼らを守るために開発されたのがBarbour(バブアー)の顔とも言える「ワックスド・クロス」の誕生だった。
ワックスド・クロス(オイルドクロスとも呼ばれる)とはその名の通りコットンの生地にワックスを染み込ませていて、当初はアザラシの脂なんかを染み込ませていたらしい。(なのでめちゃくちゃくさい)
とはいえワックスを染み込ませた生地というのは防水服として英国軍に供給されるほど性能が高く信頼も厚いモノだった。
Barbour(バブアー)はその後もイギリスの生活に馴染むようにワックスド・クロスを使用したオイルド・ジャケットのアップデートを重ねてきた。
ロイヤルワラント3冠を達成している
Barbour(バブアー)はただ歴史が深いだけではない。このブランドの魅力はなんと言っても「ロイヤルワラント3冠を達成」していることだと思う。
この3つのロイヤルワラントのうち、アウトドア・スポーツが趣味のチャールズ皇太子が付与するワラントは「環境に配慮していなければならない」という条項が加えられているほど。
王室の人間というとなんだか華美な装飾品を好むようなイメージがあるが、イギリスの国民性なのかひとつのものを大切にする、そんなジェントルマンな気質溢れる審査基準になっている。上質であり、環境にも配慮されているモノこそイギリスを代表するモノ”ロイヤルワラント”を与えられるのだろう。
ロイヤルワラントとは?
簡単に言ってしまえば「王室のお気に入り証」であるロイヤルワラント。審査基準もそれぞれ英国王、英国王妃、英国皇太子で設定してあるので、3つ全て獲得しているブランドはとても少ない。さらに5年ごとの審査が必要になるので、一度獲得したからといって次の年には剥奪されているというのもよくある話。
BEDALEのディテール
BEDALEは元々は乗馬用のジャケットとして開発されたもの。なので随所に乗馬の妨げにならないようなディテールが施されている。とはいえバブアーはその125年という長い歴史の中で培ってきた「お客様の声」をとても大切にしている。
乗馬用ジャケットという歴史を大切にしながら、ぼくたちの現代の生活にも寄り添えるように一緒に歩んでくれているのがBarbour(バブアー)の特徴だ。
今回紹介するのは2000年代のBEDALE。2022年現在ではポケットのところに「Barbour(バブアー)」のブランドロゴが縫い付けられていたり、ピンズが丸みのあるグリーンカラーに変更されていたりと若干異なる部分がある。
個人的には現行モデルよりもこの一歩前くらいのビデイルが好きなのでメルカリで購入した。購入する際の注意点も書いているのでぜひディテールの紹介にも目を通してほしい。
ワックスド・コットン(オイルドクロス)の生地
Barbour(バブアー)を語る上でこれは外せない。
Barbour(バブアー)が支持されているのはその歴史だけでなく、創業当時からずっとワックスド・クロスを使い続けているところにある。
この生地の特徴はワックスを染み込ませたコットンを使っていること。ただのコットン生地だと雨が染み込んだり、風を通してしまって寒空の下で着るにはなんとも心もとない。
そんなコットン生地にワックスを染み込ませることで防水・防風の上質な生地に生まれ変わる。雨が多いイギリスならではの発明だったが、現代でもちょっとした小雨くらいなら全然使えるくらいにその効果は絶大だ。
さらにこのワックスド・クロス、着ているうちにどんどんとオイルが抜けてくる。このオイルの抜けていく様はさながらジーンズのアタリ、革製品のエイジングのような独特の表情を見ることができる。
使い続けているうちによく擦れる場所や、知らず知らずのうちにクセになっていた手をポケットに突っ込むことや、肘や脇のシワ。こういった部分だ長い時間をかけて段々とオイルが抜けていき、その人だけのBarbour(バブアー)が出来上がる。
しかもリプルーフという方法を使うことでBarbour(バブアー)は何度でも蘇らせることができる。
リプルーフとはオイルの抜けたBarbour(バブアー)にオイルをもう一度染み込ませること。そうすることで今までの光沢や防水性・防風性を蘇らせることができる。ひとつのモノを大切にするイギリスの国民はひとつのBarbour(バブアー)をリプルーフしたり、布を縫い付けたりして大切に着続ける。
Barbour(バブアー)をどれくらい大切に着続けるかといえばおじいちゃんから受け継ぐモノというくらいに大切にする。
孫の代まで使える洋服とはこれまであっただろうか。現代の機能性ファッションももちろん防水性や防風性が高いものがたくさんあるが、ここまで長く使えるのはBarbour(バブアー)だけだと思う。
コーデュロイの襟
バブアーの象徴ともいえる風避け用の襟。
これは風が強い日なんかはこの襟を立てて使う時に、首に触れる部分がコーデュロイになっているので肌に優しい。ワックスド・クロスとこのコーデュロイという組み合わせが、ラギットな雰囲気な中にイギリスのクラシカルな香りを感じるなんとも絶妙なバランス感覚。
Barbour(バブアー)を模したアウターはいくつもあるけれど、やっぱり本家本元のこのビデイルこそが一番イギリスのセンスの良さを感じる。
そんな襟にはイギリス現地では付録のピンズを付けている人が多いみたい。
Barbour(バブアー)はジャケットを購入すると付録としてピンズが付いてくる。それも年代によってデザインが変わるので、自分の好きな年代のピンズを見つけるのも楽しみのひとつ。もちろん他のピンズを付けたりして自分らしさを演出するのもいいかもしれない。
ぼくが買ったBEDALEは2000年代のもので、その頃のピンズは写真のように黒字の角張ったデザイン。なんとも無骨な雰囲気で気に入っている。
現行のピンズはグリーンの丸みを帯びたデザインで好き嫌いはあるかと思うが、メルカリやヤフオク!なんかでもピンズだけで売っていることもあるからチェックしてみよう。
ハンドウォーマーポケット
2000年代のBEDALEにはハンドウォーマーポケットが付いている。
ポケットの内側はフリースのようになっていて、位置的に自分の心臓に近いというのもあってとても暖か。
またこのポケットに手を突っ込んで歩く様はさながら男らしいイギリス紳士。威圧感のない男性的雰囲気をポケットひとつで醸し出すとは流石の一言。これも歴史の長さによるものなのだろうか。
それとこのポケットは意外と深さがあって、iPhoneくらいならすんなり入る。冬場の気温の低い日なんかは寒さの影響でiPhoneの電源が落ちやすくなる。そんな事態もこのポケットに入れて持ち歩けば解決する。
スナップボタン付き大きめポケット
2000年代のBarbour(バブアー)のジャケットには大きめのポケットが左右にひとつずつ付いている。このポケットのサイズも絶妙で小物類はもちろん、長財布や大きめの荷物くらいならポンポンと安心して入れられる。
さらには裏地にもしっかりとタータンチェックが施されており、大きめポケットのワークジャケットの雰囲気もピシッと締まるイギリスならではのコダワリを感じることができる。
水抜き穴のストーリー知ってる?
さらにこのポケットの底にあしらわれている”水抜き穴”。
これは元々バブアーを愛用していた釣り人がジャケットを買うときにナイフでポケットに小さな穴を開けたらしい。
なんでも獲った魚をこのポケットに突っ込んだ時にその水分を抜くためにわざと開けているとのこと。
そんな声を聞いたBarbour(バブアー)はこの水抜き穴はデフォルトで用意されるようになったみたい。
そんな「お客様の声」をしっかりと反映させているこのジャケットには長年イギリスの生活に寄り添っていた形跡を見ることができる。
イギリスだと釣りの時に着ていく人も多いみたいだよ!
動きやすいラグランスリーブ
BEDALEは動きやすいラグランスリーブを採用している。
休日でもスーツにネクタイを欠かさないイギリスの紳士たちが羽織っても動きの邪魔にならないように改良されたもの。
もともと中にスーツを着ていることを想定して作られているので、このBEDALEのジャケット一枚だけで着ようとすると結構でかい。
ラグランスリーブとは?
肩パッドのない洋服の作り。
ラグラン将軍という人が開発した作りで負傷した兵士が脱ぎ着しやすいように作られたらしい。
肩パッドがない分肩の可動域が広く、とても動きやすい。インナーを着込んでも肩の部分でストンと落ちるので着膨れしにくいなどといった特徴がある。
英国人の大きな体に合わせた作りになっているので、日本人がBarbour(バブアー)を買う時はワンサイズダウンして買うのが良さそう。もしくはジャストで買って、英国紳士にならってしっかりスーツ・ジャケットを着てその上にBarbour(バブアー)を着るようにするのがめっちゃクラシカルでかっこいいと思う。
この辺は個人差が大きいところだと思うので、実際に試着するのが一番。店舗の所在はこちらから。
蒸れにくいベンチレーション
BEDALEの脇下にはベンチレーションが設けられている。
この後紹介するが、Barbour(バブアー)のワックスドクロスは着ていると結構蒸れてくる。
BEDALEはワックスドクロスを採用したジャケットなので雨風を防ぐのはもちろんだが、その分汗の蒸発分も通しにくいというデメリットもある。
特に汗のかきやすい脇の部分には通気用のベンチレーションが開けられているが、特にそのような設計のない背中は結構蒸れる。
ベルクロ付きの内ポケット
BEDALEには右側の前身頃に内ポケットが用意されている。
小さなベルクロで止められているタイプで、よくスーツのジャケットなんかで見るようなディテールになっている。やっぱり紳士の国イギリスでは内ポケットといえばベルクロ付きが当たり前なのだろう。
この内ポケットは前のスナップ付きポケットと比べればひとまわりくらい小さい。とはいえ長財布くらいは入る深さがあるので普段使いのうちでは全く問題ない。
BEDALEにはポケットがたくさん用意されているのでバッグなど持たなくても十分荷物を持ち運ぶことができる。
ぼくもBEDALEを着ているときはワックスド・クロスを傷つけたくないのと、バッグを持ちたくないのとで全部ポケットに突っ込んで出歩いている。
荷物としても大体財布とかiPhoneとかイヤホンとかになるわけだけれど、それとプラスして充電器やタバコなんかあっても全然問題ない。
バブアーにおすすめのバッグがあったら教えてください!
スナップボタン付きのサイドベンツ
BEDALEは元々乗馬用のジャケットとして開発された。その影響で乗馬の妨げにならないようにサイドベンツが用意されている。
このスナップボタンを開くとジャケットの裾が広がり、乗馬の跨る姿勢を邪魔しないように配慮されている。現代ではバイクや自転車なんかによく乗る人なんかはありがたいディテールなんじゃないだろうか。
ワークジャケットとしての歴史と紳士のスポーツの乗馬の融合がこういった随所に垣間見ることができる。
袖のリブ
BEDALEは防風性能を高めるために袖口はリブ仕様になっていて見た目よりもしっかりと暖か。
このリブはしっかりとした締め付けになっているので腕時計をつける人は隠れてしまって見にくくなってしまうかも。
とはいえ着込みがちな冬の時期でも作業をしているときにこのリブのおかげで袖口がずり下がってくるようなこともないので、手元の作業をしていてニットが下がってきて邪魔! みたいなことにはならない。アクティブに活動するときには重宝する仕様だと思う。
もしメルカリやヤフオク!なんかで中古のビデイルを買おうとしている人がいたらこの「リブの状態」はしっかり確認しておこう。
汚れやすい部分になるし、地肌に触れる分痛みやすいデリケートな箇所になる。ここがしっかり綺麗であれば状態の良いものを探すことができると思う。
大きめリングのバブアージップ
BEDALEのジップは大きめのリングジップになっている。
これは元々手袋をしていても開け閉めしやすいようにと施されたディテール。ジップもダブルジップになっていてサイドベンツと同様に腰回りの可動域を広げてくれる。
それにダブルジップは跨る時の他にも座る時なんかも重宝する。座る時はスーツのボタンを開けるように、下のジップを少し上へずらして座った方が生地が痛みにくくジャケットが長持ちする。
フードも装着可能
BEDALEは拡張性も高い。
コーデュロイの襟の裏にはスナップボタンが設けられていて、ここに別売りのフードをつけることもできる。
特にフードは「ワックスド・クロス」を使っているのでこれもまた雨風を凌ぐことができる。
このフード付きのBEDALEを持ってさえいれば、例えば犬の散歩の時なんかも傘をささずにいくことができる。イギリスでは軒に吊るしてサッと羽織って使うらしいから、リアルな使い方としてはこういうガシガシ使っている方がカッコいいかも。
犬用のBarbour(バブアー)もあるのでお揃いコーデして散歩するのも良さそう。なんでもBarbour(バブアー)を持っている人は犬を飼っている人が多いそうだ。
犬と散歩しているのか、Barbourと散歩しているのか……
着丈は短め
BEDALEはバブアーの他のジャケットと比べても着丈が短く設定されている。
紳士の国イギリスは普段の休みの日でもスーツスタイルでいる人が多い。そんな中では着丈が短いのはやっぱりその動きやすさが買われているところがあるんだろう。
Barbour(バブアー)ではビデイルの他にもビューフォートというジャケットも展開されている。
これは着丈が長く設定されているのでスーツを着ているその上から羽織るとめちゃくちゃにカッコいい。とはいえビデイルももちろん、そのラギットな雰囲気が中に着込んでいるスーツとギャップとなってあえてビデイルを着るという人も多い。
ビデイルの方がオン・オフ使えるというのもファンが多い理由だろう。キャサリン妃もガーデニングをしている時はよくビデイルを着用していて、その着丈の短さからしゃがんだりしても裾が汚れないので気に入っているのかもしれない。
とはいえ着丈が短いので中に着るジャケットを選ぶようにはなる。
個人的にはビデイルよりも着丈の長いジャケットを中に着込むのは好きじゃないので、最近のオーバーサイズのトレンドを無視してジャストサイズで洋服を選ぶようになった。
トレンドにも左右されなくなるのはやっぱり流行りを追うよりも歴史に忠実なBarbour(バブアー)を着ているから。トレンドを追うよりも伝統を大切にしていきたい。それこそ本当のサステイナブルなんだと思う。
あえてズボンのポケットに手を入れてビデイルをクシャッとさせるのが好き!
BEDALEのレビュー
Barbour(バブアー)のBEDALEは機能性の高さと、無骨な雰囲気、そして歴史感じるクラシックな佇まいのオトコをツボをおさえた正に正真正銘オーセンティックな英国アウターだ。
そんなBEDALEを実際に着てみて感じたことをレビューしていく。結果としてはやっぱり現代のゴア・テックスってすごいってなった。
防寒性は低い
いくらオイルドジャケットが雨風凌げる画期的発明だと言われても、現代のゴア・テックスなんかには敵わない。
というよりむしろオイルドジャケットは外の気温に左右されてかなり生地自体がひんやり冷たくなる。
普通のコットン地のジャケットじゃ考えられないくらい冷たくなるので、確かに風は通さないけど冷たい、みたいな状態になる。
生地自体が冷たくなるので、防寒対策はライナーを付けたり、厚手のセーターを着たりした方が良さそう。ひんやりしたBEDALEに直に肌が触れるのはあまり考えたくない。
透湿性も低い
Barbour(バブアー)のオイルドジャケットは確かに雨を通さず風にも強い。
だが裏返せば汗なんかも通さないので暖房の効いた部屋なんかで着ていると汗が逃げずに蒸れの原因になったりもする。脱いでみると背中の裏地が濡れていたりするのでオイルドジャケットの効果はテキメンなのだろうけれど不快この上ない。
最近のゴア・テックスなんかだと汗などの水蒸気はしっかり逃す透湿性が高いのでそんなことは起こらないが、Barbour(バブアー)の場合は別。
これだとアウトドア・スポーツなんかに夢中になっていると自分の汗でびっしょりになってしまうと思う。
オイル特有の臭い
こんなのはわかって使っているのでデメリットとは言えないけれど、Barbour(バブアー)のワックスドコットンには染み込ませたオイルの匂いがほのかに立ち昇ってくる。
このオイルは昔はアザラシの脂を使っていたとかなんとかだけれど、現行のBarbour(バブアー)になればその匂いはほとんど気になることはない。それくらい改良されているけれど、夏場の管理をしっかりしないとオイルが酸化して匂いの原因になることもある。
管理の難易度が高いのはBarbour(バブアー)ならではだけれど、Barbour(バブアー)を買って後悔しない人はそれを許せるかどうかにかかってくると思う。
まとめ
Barbour(バブアー)は125年もの歴史を感じる英国ブランドのひとつだけれど、実際に現代のハイテクファッションには到底敵わない性能であるのは確か。
だけれどそれでもBarbour(バブアー)を着ている人はトレンドというよりもそのBarbour(バブアー)が持つストーリーが好きで着ている人が多いと思う。
昔から姿をほとんど変えていないバブアーはその”哲学”を大切にしていて、大切に使えば孫の代までずっと使える。
そんなBarbour(バブアー)のまとめ。
- 経年変化するエイジングを楽しめる
- リプルーフやケアをしっかりすればずっと着続けることができる
- トレンドに左右されないクラシックな装いをすることができる
- 防寒性は低い
- 汗や水蒸気も通しにくいので裏地が濡れる
- オイルの匂いに気を遣う
Barbour(バブアー)のストーリーを取るか、服としての機能性を取るか。もはやファッションの哲学に問いかけるような質問になるが、ぼくはBarbour(バブアー)が大好き。
例えオイルの匂いが気になっても地球のためにもこれからもずっと着ていこうと思う。
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